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国際シンポジウム

Konrad Streitberger

University Clinic for Anaesthesiology and Pain Therapy
Inselspital, Bern University Hospital, Switzerland

鍼治療のランダム比較試験(RCT)では、コントロール介入として、たいてい皮膚に刺入するsham鍼が用いられている。シャム鍼とは、経穴でない部位への鍼治療を指す。皮膚に刺入するsham鍼は、皮膚への刺入により生理学的変化が引き起こされるため、プラセボとして定義されるべきではない。
1998年にStreitberger (1)により新しいプラセボ鍼が紹介された。このプラセボ鍼は皮膚に刺入せず患者をマスクすることが可能である。それ以来、このプラセボ鍼やこれと同様の鍼(2)は、皮膚に刺入しないsham鍼として、鍼の有効性の研究、実験的研究やRCT(3)において頻繁に用いられている。
この短いレビューでは、Streitbergerのプラセボ鍼、Parkのsham鍼、単に先端を鈍化した鍼による手法を紹介する。1999年以来、40以上のRCTでこれらの皮膚に刺入しないsham鍼のどれかが用いられている。いくつかの疼痛性疾患で、鍼はコントロールと比較して有意な改善を示したものの、多くの研究では2群(真の鍼とsham鍼)の間で統計学的な有意差を示さなかった。 その理由としては、治療時の状況によるプラセボ効果、sham鍼で皮膚を触れることによるわずかな治療的効果、多くの研究では少ないサンプルサイズでの予備的研究であったこと、などが考えられる。このように研究が不均一であるため、鍼の臨床的効果についての結論を述べることは未だ不可能である。
特に疼痛性疾患における皮膚に刺入しないsham鍼との比較による鍼治療の研究は、鍼を刺入することの重要性を理解する上では今後ますます必要である。批判的に討論ことが、現存の研究の問題点を洗い出し、さらに今後の研究のプロトコールの改善に繋がるであろう。

 

 

高倉伸有

東京有明医療大学 鍼灸学科 教授

これまで鍼の研究分野において、術者ならびに患者をマスクするダブルブラインド法を用いた実験はできない、というのが通説であった。患者をマスクすることは可能であるが、施術者をマスクすることは不可能だと考えられていたからである。
海外の研究者らによって近年考案されたシングルブラインド用プラセボ鍼(シングルブラインド鍼)は、患者に対して、刺入される鍼との見分けがつかないように工夫されている。これらのシングルブラインド鍼は、それ以前に鍼の研究で用いられてきた「コントロール」の多くの問題点を解決し、実験結果の信憑性を高めることに多大な貢献を果たしている。しかし、現代医学的な見地からすれば、患者のみをマスクするシングルブラインド法では、マスクされていない施術者に起因する様々なバイアス(施術者の態度など)の関与を否定することができず、治療そのものによる特異的な効果を証明することはできない。鍼の研究においても、シングルブラインド法によって得られた実験結果には疑問の余地を残すことになる。
鍼刺入の特異的効果を証明し、鍼治療を現代医療の水準に引き上げるためには、ダブルブラインド法を用いた実験が不可欠である。しかし、この方法を可能にするためのダブルブラインド鍼の開発は、術者マスキングの困難さによって阻まれていた。
 そこで私たちは、鍼研究におけるダブルブラインド法の実施を妨げる方法論的難題を解決するために、術者マスキングが可能なダブルブラインド(術者−患者マスキング)プラセボ鍼を考案し、その効果を検討した。
本シンポジウムでは、この新しいダブルブラインドプラセボ鍼の構造と、マスキング効果について概説する。

 

 

川喜田健司1、Adrian White2

1 明治国際医療大学 生理学ユニット 教授
2 Clinical Research Fellow, General Practice and Primary Care
Peninsula Medical School, UK

最近のよくデザインされた大規模RCTとそのメタ・アナリシスによって、ある条件下においては、真の鍼の介入は通常治療よりも効果が高いことが明確に示されている。しかし、真の鍼治療とシャム鍼治療の間には有意な差は認められない。これらの結果から、鍼には特異的効果が無く、それは強いプラセボ効果あるいは期待効果であるという結論が導かれる傾向にある。
この短いレビューでは、最近の臨床試験でシャム鍼として使われている最小鍼やStreitberger鍼、Park鍼が生理学的に無効果の介入ではないことを示す若干の知見を紹介する。ポリモーダル受容器は鍼灸刺激の受容器と見なされているが、それはシャム介入によって興奮させられることを忘れてはならない。
日本の鍼はシャム鍼の介入にきわめて類似しており、鍼の特異効果を明らかにするためには、これまでのものとは異なる無効のシャム・プラセボ介入が必要である。
 最近、押ピン式の鍼(PTN,セイリン社製)とそのシャム鍼が開発された。その真の鍼は細くて短い鍼(直径0.2mm、長さ0.6mm)がプラスチックのディスク(直径3.5mm)に垂直に埋め込まれ、粘着テープで皮膚に貼り付けられ、シャム鍼はその鍼が除かれている。これらのPTNを使って行われたRCTによって、トライアスロン選手の疼痛緩和効果がVASを使って調べられた。その結果、2種類のPTNのマスキングは成功し、真のPTNとシャムPTNの間に有意な差があった。
 これらのことから、鍼の臨床的な有益性は十分に確立され、またシャム鍼に生理学的な効果があることも明らかになった。鍼の特異的効果については、新たに開発された真とシャムのPTNを使ったさらなる臨床試験によって早急に明らかにされるべきである。

 キーワード:シャム鍼、特異的効果、プラセボ効果、ポリモーダル受容器、押しピン式鍼

 

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