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国際シンポジウム

 

劉保延

中国中医科学院 副院長

中医学では腰痛は痺証に分類され、鍼灸科では近年一般的な疾患となっている。症状は主に両側または片側の腰部の痛みで、中医学理論によると、腰痛の発症機序としては、「鬱滞」と「虚」が共に関与すると考えられている。古くから鍼灸が腰痛治療に用いられてきたのは、効果が高く、副作用が無く、施術が簡潔で、安価であるなど多くの利点が挙げられるからである。
 腰痛は多くの疾患により引き起こされる非常に一般的な症状である。近年、主に鍼灸によって治療される病態としては、椎間板ヘルニア、椎間板膨隆、腰椎骨棘過形成、腰仙部軟部組織損傷、腰部筋挫傷、腰仙部筋膜炎、第3腰椎横突起症候群、腰部脊柱管狭窄症などがある。病因としては、上記の疾患で引き起こされる組織増殖、変性、アライメント障害、損傷や無菌性炎症などが密接に関与している。
 腰痛治療の手技には、主に鍼、電気鍼、のぎ鍼、温鍼、火鍼、水鍼、灸などがあり、また鍼とともに用いられるその他の手技としては、牽引、マッサージ、針刀(針メス治療、吸い玉、漢方薬などがある。
 鍼灸による腰痛治療に用いられるのは、局所の経穴、阿是穴や遠位経絡上の経穴および特異的な経穴で、腰部の夾脊、腰陽関(GV3)、腎兪(BL23)、環跳(GB30)、承扶(BL36)、委中(BL40)、陽之陵泉(GB34)、承山(BL57)、足三里(ST36)、太衝(LR3)、攅竹(BL2)、水溝(GV26)、後谿(SI3)などである。
 腰痛に対する鍼治療は、深部に刺入し、強い刺激を与える手技が用いられることが多い。治療所では鍼による腰痛治療は、まず疼痛部位の所属する経絡を診断することに焦点が当てられる。すなわち、罹患経絡は弁証により確認され、それをもとに選穴や処方が行われ、鍼の効果を適正なものにしている。
 鍼治療は明らかに疼痛の軽減に効果的で、他の単独の治療法や薬物より優れた治療法である。また、臨床上大きな副作用もない。

 

 

Kim Yong-Suk

Professor, Department of Acupuncture and Moxibustion
College of Oriental Medicine, Kyung Hee University, Korea

腰痛は、成人人口の約80%がわずらっている疾患であると言われている。また、腰痛は、様々な因子がその原因となり、症状を軽減するため様々な治療法がこれまで行われてきている。
鍼治療は、簡便で、効果的な保存的疼痛管理療法である。従って、腰痛治療に用いるのに非常に効果的で簡便である。鍼治療は、特定の部位に鍼を刺入し、手で操作したり、電気パルスや他の機器を利用したりして、それらの部位を刺激する手法である。韓国では、鍼施術者は一般的に長さ40mm、太さ0.25 mmのディスポーザブルステンレス鍼を使用している。鍼治療点としては、痛みのある局所かあるいは疼痛部位を通る経絡上の遠隔の経穴が選択される。特に、韓国では、経絡の流れと痛みの特徴を利用した舎岩鍼法(Saam acupuncture)に基づいて選穴される。
捻鍼や雀啄をはじめとする鍼の手技は不可欠である。他に利用される療法としては、灸、電気鍼、レーザー鍼、指圧、吸い玉療法などがある。
鍼は15〜20分間置鍼する。週に2〜5回で、約10回の治療が必要である。通常、鍼の効果が出るまでに3〜4回の治療が必要であるが、長期にわたる症状の軽減を得るためには、治療の状況や鍼に対する反応の個人差によって様々ではあるが、もう少し時間がかかる場合もある。

キーワード:腰痛、鍼治療、経絡、電気鍼

 

 

山下 仁

 



森ノ宮医療大学 鍼灸学科長、教授

2009年2月の時点で、PubMedと医中誌Webを用いて検索を行うと、日本で行われた腰痛に対する鍼治療のランダム化比較試験(RCT)は、おおよそ10編を見出すことができる。そのほとんどはポジティブな結果を報告している。選穴と刺激方法は、トリガーポイント、大極療法、阿是穴、決められた一定の経穴、マニュアル鍼、皮内鍼・円皮鍼、電気鍼である。
 RCTで採用している治療法は、日本の鍼灸師の日常臨床における手ごたえと必ずしも一致しない。検索の際に、引用文献や所蔵ファイルのハンドサーチも行えば、さらに40編のRCT(または臨床試験)論文を見つけることができる。これらのRCT、特に1970年代と1980年代に行われたものについては、毎日臨床を行っている開業鍼灸師がもっと関わっていた。しかし1990年代以降に行われたRCTの著者と刺鍼者のほとんどは鍼灸の大学または学校の教員・研究者・大学院生である。よくデザインされ、適正に実施されたRCTは確かに強いエビデンスを示すことができるのだが、鍼灸学校教員が常に鍼灸の名人であるわけではない。鍼のRCTにおいては、治療者の技術の関与が重要な因子のひとつであり、これが薬剤のRCTとは異なる点である。
 つまり、実際に行われている鍼治療の有用性に関するエビデンスを探すのには限界がある。いわゆる「本物の鍼」(例えば筋内刺鍼)といわゆる「偽鍼」(例えば体表刺鍼)を比較したRCTにしても、鍼の有効性を検討しているのではなく2つの違った鍼治療法を比較しているのかもしれない。実用的な観点から言えば、今後は偽鍼の臨床的効果、より優れた鍼治療法、そして鍼灸師個別の治療技術の差異にも目を向けるべきである。

キーワード:鍼、RCT、日本、治療者の技術、偽鍼

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