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研究活動

全日本鍼灸学会雑誌 第48巻3号

学会の使命と課題とを考える

社団法人 全日本鍼灸学会 会長
丹沢章八

使命の認識

鍼灸医学・医療に関するかぎり,分科化もしくは極端な専門性は,少なくとも現時点では合理性を欠く.したがって当分の間,わが国における唯一の鍼灸医学の学術団体である本学会の活動には,時代に即して,鍼灸臨床関連のup to dateの知識を総括して評価・蓄積することと,鍼灸治効原理の検素と研究をリードしていくという大きな使命(責任)が付与されている.学会員は,改めてこの事実を確認し,その使命をそれぞれが分担していることを,ステイタスに繋がる矜恃として認識する必要がある.その矜恃が結集した中から生まれてくる力こそが,わが国の鍼灸医学・医療の向上と発展とを目指す唯一の推進力となることも.

課題の意識

鍼灸医療には診断・治療の各段階にさまざまな「かたち」(流派一stuff)があり,鍼灸臨床は「かたち」の集合体で成り立っている特殊な医療形態とも,またそれこそが鍼灸の面目ともいえなくもない.がゆえに,これを人間社会における民族性の相違に例えれば,「かたち」の間に隔壁を設けたり,互いがdogmaticに批判したりすることは極めてナンセンスな行為であることが首肯けよう.一方,「かたち」は個性に置き換えられる重要な要素ではあるが,それぞれが持つスタングードは経験至上主義に貫かれ,別の「かたち」には通用しないローカルなもので普遍性は全くない.これでは「かたち」相互の議論がかみ合わないことは勿論のこと,ここからは,いま,最も求められている医療として説得できる根拠一evidence一は決して生まれてこない.本学会の基本的スタンスは,鍼灸に関するあらゆるstuffを包括する構えを持つことであるが,その包括的な構えの根底は,「かたち」を縦横に貫き,世界を視野に入れたグローバルなスタンダードを作り出す創造性と,それを具現化するfightで固められなければならない.学会員はこのことをしっかり意識する必要がある.

ところで,未病治の話題が盛んである.鍼灸はまさに未病治の医療であることは,鍼灸界における数少ないコンセンサスの一つであろう.しかしいま,この時代に即した未病治を実践できる「上工」は幾許いるであろうか.国が成人病を生活習慣病という呼称に取り込んだ意図は,国民保健に関し,第二次予防と同等に第一次・三次予防をも重視しする行政の方向性を示し,いうならばライフステージに沿った未病対策を重点施策に繰りこむことを含意している.社会的医療資源の組織的な運用をもって行われるであろうこの国家的な未病対策の中に,鍼灸はローカルスタンダードを引っ提げて参入しようとしても限界がある.それどころか,運用に乗り切れずかえって時代に取り残されることになるのは目に見えている.現代に通用する「上工」はいかにあるべきか.鍼灸医療が未病治医療を自任するevidenceは何か.その答えを提示して,鍼灸の医療的価値を内外に啓蒙することが,早急に学会に課せられた課題の一つと考えるが,いかがなものであろうか

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